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2025.04.30
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1 はじめに
皆様、こんにちは。
私たちの【SPIRIT・CONSORT2024 特集】は楽しんでいただけているでしょうか?
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ヒト臨床試験 (ヒト試験) を行う上で避けては通れないのは、欠測値ですよね。
第一回でもCONSORTの新項目 (SPIRITと調和させるための追加) として、「欠測データを取り扱うための統計的手法」が追加されるかも、というお話をさせていただきました。
今回は、その「欠測データが解析結果にどのような影響を及ぼすのか」についてお話させていただきます。
2 本日の内容
ランダム化された全症例 (intention to treat; ITT) で解析することは、ヒト臨床試験 (ヒト試験) の信頼性を担保する上で重要です。しかし、ヒト試験では試験参加者の転勤等を理由とした脱落などで試験データの欠測が引き起こされることも少なくありません。
この欠測が試験結果に与える影響を、仮想事例で確認していきましょう。
※220例で試験を実施した場合をStudy1、300例で試験を実施した場合をStudy2とする
この事例は、ベースライン時のLDL-Cが境界域 (120 mg/dL以上139 mg/dL以下) の者にサプリメントAかプラセボを摂取させるRCTです。12週時のLDL-Cが120 mg/dL未満であれば「効果あり」、そうでなければ「効果なし」という主要アウトカムを設定しています。
このデザインで、Study1とStudy2という2つの試験を実施しました。
Study1では20例、Study2では100例が欠測してしまいました。
しかし、最終評価時点の症例数はともに200例です。
この2つの試験をそれぞれ解析してみましょう。
それぞれの試験に対して、4つのシナリオに基づいて解析を行いました。
4つのシナリオは、
① 観測データをそのまま解析した場合
② 欠測が観測と同様の効果であると仮定した場合
③ すべての欠測が無効と判定した場合
④ サプリメントAの欠測は無効、プラセボの欠測は有効
としました。
このシナリオは、①から④にかけて厳しくしています。
Study1は、欠測率がStudy2よりも小さいため、どのような仮定においても結果はある程度安定しており、有効性の証拠として受け入れやすい状態です。
一方で、Study2は欠測率が大きいため④のシナリオで有意差を示さなくなりました。
この事例から分かることはデータが欠測するほど、介入効果への影響が大きいということです。
また、データ数の減少によって推定値の標準誤差が大きくなり、検出力の低下につながります。
以上の、仮想事例から欠測データがヒト試験の推論に与える影響をまとめます。
まず、精度の低下です。
変化率や有効率などの推定値は、データ数が多くなれば標準誤差が小さくなり精度が高くなります。よって、欠測データが発生することによって、解析に利用できるデータ数が少なくなると、推定値の標準誤差が大きくなり、精度が悪くなります。
つまり、検出力の低下に繋がり、信頼区間が広くなり、有意確率が大きくなることにつながります。場合によっては計画どおりの試験参加者数を収集し、想定通りの介入効果が観察されたとしても有意差が得られないということが起こり得ます。
他にも、バイアスの発生が考えられます。
こちらに示した図は、被検者の状態が悪くなると試験を中止する可能性が存在する場合の「観測された平均値」と欠測がなかったと考えられる「真の平均値」の差を示しています。「観測された平均値」は「真の平均値」よりも高値を示し、結果が真実よりも系統的に偏っており、バイアスが発生しているといえます。無視できないバイアスが危惧される場合には論文の査読などで指摘される可能性があるので注意が必要です。
最後に試験結果の安定性が損なわれることも考えられます。
全ての欠測データは、本当の発生理由がつきとめられない場合が多く、欠測でなかったとしたらどのような値をとっていたかもわかりません。
そのため、さまざまな仮定を置いて「もしこの仮定が正しいならば、このような結果が得られていたはずである」という推論を行います。どのような仮定を置いても結果が大きく異ならないならば、結果の安定性は示せます。しかし、仮定の置き方によって結果が大きく異なるのであれば、結果の安定性は損なわれ、結果の解釈において強い主張はしづらくなります。
3 まとめ
今日は「欠測データが解析結果にどのような影響を及ぼすのか」についてお話させていただきました。
欠測の処理方法は非常に重要で、
解析方法や結果の解釈に大きな影響を与えます。
欠測が含まれる臨床試験データの解析は、欠測を考慮した解析が必要です。
欠測のパターンはいくつか存在し、それらの対応方法も異なります。
欠測に対応した解析方法は、また、本メルマガを通してお伝えしようと思います。
オルトメディコでは、統計解析だけの受託が可能です。
これからヒト臨床試験 (ヒト試験) を考えている方だけでなく、実施中の方もご依頼いただけます。
とくに二重盲検試験の場合、解析計画の見直しまでお手伝いできるので、
統計解析のスペシャリティCROとしても、弊社をご利用ください。
4 参考文献
● | Tunn R, Boutron I, Chan AW, Collins GS, Hróbjartsson A, Moher D, Schulz KF, de Beyer JA, Hansen Nejstgaard C, Østengaard L, Hopewell S. Methods used to develop the SPIRIT 2024 and CONSORT 2024 Statements. J Clin Epidemiol. 2024; 169: 111309. (PMID: 38428538) |
● | Schulz KF, Altman DG, Moher D; CONSORT Group. CONSORT 2010 statement: updated guidelines for reporting parallel group randomised trials. BMJ. 2010; 340: c332. (PMID: 20332509) |
● | Chan AW, Tetzlaff JM, Altman DG, Laupacis A, Gøtzsche PC, Krleža-Jerić K, Hróbjartsson A, Mann H, Dickersin K, Berlin JA, Doré CJ, Parulekar WR, Summerskill WS, Groves T, Schulz KF, Sox HC, Rockhold FW, Rennie D, Moher D. SPIRIT 2013 statement: defining standard protocol items for clinical trials. Ann Intern Med. 2013; 158(3): 200-7. (PMID: 23295957) |
● | Chan AW, Tetzlaff JM, Gøtzsche PC, Altman DG, Mann H, Berlin JA, Dickersin K, Hróbjartsson A, Schulz KF, Parulekar WR, Krleza-Jeric K, Laupacis A, Moher D. SPIRIT 2013 explanation and elaboration: guidance for protocols of clinical trials. BMJ. 2013; 346: e7586. (PMID: 23303884) |
● | 消費者庁. 機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制 (事後チェック) の透明性の確保等に関する指針 (2025年4月08日アクセス可能: https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/pdf/about_foods_with_function_claims_200324_0003.pdf) |
● | 消費者庁. 機能性表示食品の届出等に関する手引きについて (2025年3月25日付け消食表第273号) (2025年4月08日アクセス可能: https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/notice/assets/food_labeling_cms205_250325_01.pdf) |
● | 厚生労働省. ICH E9 臨床試験のための統計的原則 (平成10年11月30日付医薬審第1047号) (2025年4月08日アクセス可能: https://www.pmda.go.jp/files/000156112.pdf) |
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