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2025.06.02

【速報】CONSORT2025がついに公開!
統計的手法の変更点についての解説

こんにちは。
株式会社オルトメディコ 統計解析課の髙橋です。

CONSORT2025が公表されました。
一緒に内容を確認しましょう。
  • 資格
    危険物取扱者甲種
  • 学位
    学士 (工学)
  • 最終学歴
    2021年3月 日本大学 理工学部 物質応用化学科 卒業
  • 役職
    主任
  • プロジェクト
    ORTHOプロジェクト リーダー/社内データ利活用プロジェクト リーダー
  • 得意なこと
    解析プログラムの作成
  • 趣味
    温泉巡り
  • 好きな言葉
    努努努力を忘れるな
  • 連絡先
    planning-department@orthomedico.jp

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1 はじめに
皆様、こんにちは。

このたび、ランダム化比較試験 (RCT) の報告ガイドラインとして広く活用されている「CONSORT声明」が、最新版であるCONSORT 2025として公開されました。

2024年に発表された「Methods used to develop the SPIRIT 2024 and CONSORT 2024 Statements」にて、更新の方向性が示されていたため、今回のリリースを心待ちにしていた方も多いのではないでしょうか。

オルトメディコのメルマガでも、同論文をもとに今後の更新ポイントを予測・解説してまいりましたが、ついに正式な変更内容が発表されました。

今回は、CONSORT 2025で変更になった「Statistical methods」について紹介します。

CONSORT 2025 no. CONSORT 2010 no. Checklist item
21a 12a Statistical methods used to compare groups for primary and secondary outcomes

Statistical methods used to compare groups for primary and secondary outcomes, including harms
21b - Definition of who is included in each analysis (eg, all randomized participants), and in which group
21c - How missing data were handled in the analysis
21d 12b Methods for additional analyses, such as subgroup analyses and adjusted analyses

Methods for any additional analyses (eg, subgroup and sensitivity analyses), distinguishing prespecified from post hoc

これまでの12a・12bに対応する内容は、より詳細化され、項目21a〜21dになりました。

臨床試験の結果報告では、統計解析の方法を十分に詳述することが求められます。CONSORT 2025 の項目21では、主解析・副次解析に用いた統計手法から、誰をどのように分析対象としたか、欠測データへの対応、さらに感度解析やサブグループ解析などの追加解析まで、4つのサブ項目に分けて記載を推奨しています。

2 Item 21a: 群比較に用いた統計手法の詳細
主解析および副次解析でどのようなモデル・手法を用いて群間比較を行ったかを、読者がデータを再解析できるほど十分に詳述します。
 
モデルの種類と目的の例
以下の表のように変数に対応した解析手法を選択しているか確認しましょう。

変数の種類 解析手法
二値アウトカム 混合効果ロジビノミアル/ロジスティックモデルで調整リスク比(RR)やオッズ比(OR)を推定など
連続アウトカム 線形混合モデル(LMM)で調整平均差を算出など
時間-イベント解析 Cox 比例ハザードモデル、Fine-Gray など
カウントデータ Poisson 回帰モデル、負の二項回帰モデルなど

モデル構成の詳細
以下の表のように解析モデルの構成を明記します。

モデルの構成 詳細
固定効果 治療群、測定時点、ベースライン共変量、交互作用項など
ランダム効果 被験者内相関(乱数切片)、施設やクラスター
リンク関数や分布族 identity、log、logit、Gaussian、Poisson など

推定法・検定と報告項目
以下の表のように推定値の計算方法を明記します。

推定値 詳細
推定量 調整効果量(RR、OR、平均差、ハザード比)
不確実性 95%信頼区間
統計的検定 得られた χ²統計量やWald検定、P値(可能な限り正確な値)
多重比較 補正方法(Bonferroni、Holm-Sidak など)を明示

ソフトウェアと設定
解析結果に影響を与えている環境などを明記します。

使用した統計ソフト(例: SAS v9.4、R 4.x、Stata 17)および主要パッケージ/コマンド
最尤法、制限最尤法、ベイズ解析なら事前分布とアルゴリズム

3 Item 21b: 各解析で対象とした集団の定義
どの解析に、誰 (どの症例) を含め、どの群に属するデータとしたかを明確にします。

解析集団の種類と定義

種類 詳細
ITT (intention-to-treat) ランダム化された全被験者を割付群のまま解析
modified ITT/FAS (full analysis population) ITT から「ベースライン測定あり」などの条件で一部修正
PPS (per-protocol set) 主要プロトコル順守例のみ
安全性解析集団 少なくとも一度投与された例

除外・変更の条件
誰をいつ・なぜ解析対象から外すのかルールを事前に決めておく必要があり、以下に例を示します。

他治験参加前までのデータのみ使用
事後に適格性が否定された例の扱い

用語の明確化
研究者によって、定義が異なるような単語は、必ず定義を明記しましょう。外れ値の取り扱いも要注意です。その外れ値は、介入の影響を受けた結果ではないと言い切れますか? (本当に外れ値ですか?)
以下、例になります。

“modified ITT”や“per-protocol”とは具体的に何を指すかを文章で示す
除外症例数と理由を報告し、結果への影響を説明

4 Item 21c: 欠測データへの対応
欠測データ発生時の前提と処理方法を、主解析および感度解析の両面から詳述します。

欠測メカニズムの前提
通常、MCARを仮定することは難しいので、t検定は多重代入を実施してMARに対応しましょう。

用語 適した解析の例
MCAR (Missing Completely At Random) t検定など
MAR (Missing At Random) 多重代入やMMRMなど
MNAR (Missing Not At Random) Selection modelsなど

主解析での取り扱い
complete caseの解析は慎重に実施しましょう。とくに主要アウトカムのように結論に関与する者は注意しましょう。

完全ケース解析 (complete case)
多重代入法 (MI)
MMRMを用いてMAR前提下で解析するか?

感度分析
以下のような感度分析を行うことが求められています。

MNARシナリオでの再解析 (例: 欠測値を最良・最悪ケースで置換)
LOCF法の批判的検討

報告内容
欠測データに関して、以下の内容を報告する必要があります。

各群における欠測件数と理由
欠測例 vs 観測例の基礎特性比較
主解析結果と感度解析結果の一致・不一致の報告

5 Item 21d: 追加解析 (感度解析・サブグループ解析等)
事前計画した解析と事後探索的解析を区別し、それぞれの手順と目的を示します。

感度分析
以下の点に注意しながら事前にどのような意図で実施するのか、どう結果をまとめるのか設定する必要があります。

主解析仮定の頑健性検証 (完全ケース vs. MI、モデル仕様変更など)
事前設定の方法と結果要約

サブグループ解析
なんでもかんでもサブグループという考えは危険です。以下の点に注意しましょう。また、文中にある「post hoc」は解析ソフトでありがちなpost hoc解析とは異なるので注意しましょう。

交互作用の検定として実施し、単純比較ではなく interaction term を用いたモデル
カテゴライズ基準 (年齢中央値、臨床的カットオフ) とその根拠
事前計画 (a priori) なのか事後計画 (post hoc) なのかを明記

多重検定への配慮

解析数が多い場合の補正方針
未補正の場合は「補正なし」と明示し、探索的解析として位置づけ

使用ソフト/バージョン

追加解析にも同じソフトを用いたか、新たに別ソフトを用いたか

6 まとめ
CONSORT2025の21は、臨床試験報告における統計解析の透明性を高めるための要点です。

どのモデルを、どの手法で? → モデル構造、推定法、効果量、CI、P値
誰を分析した? → ITT、 FAS、 PPS、 安全性解析集団の定義
欠測データは? → 完全ケース、MI、モデルベース、感度解析
追加解析は? → 感度・サブグループ解析の仕様と前提

これらを漏れなく報告することで、読者が再現可能性を検証でき、試験結果の信頼性を一層高めることができます。

オルトメディコでは、統計関連のコンサルティング業務として、プロトコルや学術論文中の解析計画の記載支援をはじめ、学会発表資料における生物統計の記述内容の確認・提案・修正など、さまざまなサポートを行っております。

現在、試験を実施中でも解析のご支援が可能ですので、是非お問合せください。

7 参考文献

Hopewell S, Chan AW, Collins GS, Hróbjartsson A, Moher D, Schulz KF, Tunn R, Aggarwal R, Berkwits M, Berlin JA, Bhandari N, Butcher NJ, Campbell MK, Chidebe RCW, Elbourne D, Farmer A, Fergusson DA, Golub RM, Goodman SN, Hoffmann TC, Ioannidis JPA, Kahan BC, Knowles RL, Lamb SE, Lewis S, Loder E, Offringa M, Ravaud P, Richards DP, Rockhold FW, Schriger DL, Siegfried NL, Staniszewska S, Taylor RS, Thabane L, Torgerson D, Vohra S, White IR, Boutron I. CONSORT 2025 statement: updated guideline for reporting randomised trials. BMJ. 2025; 389: e081123. (PMID: 40228833)
Hopewell S, Chan AW, Collins GS, Hróbjartsson A, Moher D, Schulz KF, Tunn R, Aggarwal R, Berkwits M, Berlin JA, Bhandari N, Butcher NJ, Campbell MK, Chidebe RCW, Elbourne D, Farmer A, Fergusson DA, Golub RM, Goodman SN, Hoffmann TC, Ioannidis JPA, Kahan BC, Knowles RL, Lamb SE, Lewis S, Loder E, Offringa M, Ravaud P, Richards DP, Rockhold FW, Schriger DL, Siegfried NL, Staniszewska S, Taylor RS, Thabane L, Torgerson D, Vohra S, White IR, Boutron I. CONSORT 2025 explanation and elaboration: updated guideline for reporting randomised trials. BMJ. 2025; 389: e081124. (PMID: 40228832)

株式会社オルトメディコ
研究開発部 統計解析課
髙橋 徳行

〒112-0002 
東京都文京区小石川1丁目4番1号
住友不動産後楽園ビル2階
TEL: 03-3818-0610
E-Mail: planning-department@orthomedico.jp

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