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ヒト試験豆知識 第2回 脂質マーカー

今回はヒト試験の視点から、脂質系マーカーを扱ってみたいと思います。

日本人の死因の第2位は心疾患、第3位は脳血管疾患であり、この両方に大きく関わってくるのが血中脂質です。

 

■LDLコレステロール

 

悪玉コレステロールと聞いてご存じの方も多いでしょう。動物性脂肪の多い食生活や、運動不足によって増加すると言われています。過剰なLDLコレステロールは血管の内壁に溜まりやすく、動脈硬化を引き起こして心疾患や脳梗塞のリスクを高めるため、基準範囲を超えることのないようにしたいものです(140mg/dL以上だと「脂質異常」)。

 

加齢とともに高値となり、20~40 歳では男性>女性ですが、閉経期以降では女性>男性となる傾向があります。したがってヒト試験でLDLコレステロールをみたいときには、参加モニターの年齢層や性差にも留意する必要があります。

 

近年はLDLコレステロールの中でも特に、酸化したものや、粒子サイズの小さい“sd-LDL”などが動脈硬化を引き起こす主要な原因物質であることが明らかになり、関心が移ってきています。

 

■HDLコレステロール

 

こちらは善玉コレステロールと呼ばれます。名前のとおり、コレステロールを末梢から肝臓へ運ぶことで、動脈硬化を防ぐ作用があります。さらに、抗炎症効果や抗酸化作用もあることが知られており、減らしたくないコレステロールです。40mg/dLを下回ると、脂質異常とされます。

 

年齢差や性差はあまりないのですが、長期の喫煙により低下することが知られていますので、試験モニターの喫煙歴に注意する必要があります。

 

■中性脂肪

 

中性脂肪のほとんどはトリグリセリド(TG)ですので、一般に中性脂肪とトリグリセリドは同義語として使われます。コレステロールと違って食事の影響を受けやすく、食後2~6時間後に最大となります。また運動や前日のアルコール摂取の影響も大きく、個人差も大きいため、ヒト試験においてはモニター管理がとりわけ重要になります。このように影響を受けやすいため日差変動が大きいですが、季節変動は小さいと言われています。

 

空腹時の基準として、150mg/dLを超えると脂質異常が疑われるとされています。

 

糖尿病やメタボリックシンドロームでは、一般に中性脂肪値が高くなりますが、中性脂肪が高くても心疾患のリスクになることが、RLP-C(レムナント様リポ蛋白コレステロール)の研究で明らかになってきました。

 

 

下図は弊社で受託した試験結果の例です。
(2009年 第31回日本臨床栄養学会「トコトリエノール摂取の血中脂質低減作用の検討」)
トコトリエノール含有被験品を4週間摂取した群の中性脂肪(TG)が有意に低下し、被験品の血中脂質低減作用が示唆されました。

 

試験デザインと概算については、こちらをご覧ください。

https://www.orthomedico.jp/metabolism.html

 

受託試験の研究実績はこちら↓

https://www.orthomedico.jp/research-perfomance/

脂質系マーカーといっても様々なものがありますが、今回は健康診断でもおなじみのマーカーを中心に考えました。

近年の研究で明らかになってきた、酸化脂質や超悪玉コレステロールなどのやや特殊なものについても以下に少し説明しますが、詳しくは次回触れたいと思います。

 

■リポ蛋白

コレステロールや中性脂肪は“油”なので、実は直接血液中を流れているわけではありません。これらの脂質は、血液と脂質の両方に親和性のある物質の容器に包まれた粒子の状態で、血中を流れています。この粒子をリポ蛋白と呼びます。リポ蛋白はその密度によって呼び方が異なり、密度の高いものをHDL(High density lipoprotein)、低いものをLDL(Low density lipoprotein)、さらに密度が低いものをVLDL(Very low density lipoprotein)、それよりさらに密度が低いものをカイロミクロンと呼びます。

 

善玉コレステロールとして知られるHDLコレステロールは、HDL粒子に含まれるコレステロールの総量を指し、同様に、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)はLDL粒子に含まれるコレステロールのことを指すのです。

 

また、密度の高いリポ蛋白ほど脂質はコレステロールの割合が多く、逆に密度が低いと中性脂肪の占める割合が多くなります。したがって、HDLやLDLはコレステロールが主体ですが、VLDLやカイロミクロンは中性脂肪が主体です。

 

脂質マーカーの代表的なものについて簡単に解説しましたが、いかがでしたでしょうか。弊社はモニター管理が重要なメタボ系のヒト有効性試験の実績も豊富です。

↓↓HPからの見積り依頼もございますので、お気軽にお問い合わせください。

https://www.orthomedico.jp/contact/contact.html

 

参考文献

瀧雅成:総コレステロール、遊離コレステロール、エステル型コレステロール.日本臨牀 2009;67(suppl 8.):12-15.

中村雅一,櫻林郁之介:LDLコレステロール.日本臨牀 2009;67(suppl 8.):20-24.

金原秀雄,青木佳子,笈田耕治:HDLコレステロール.日本臨牀 2009;67(suppl 8.):16-19.

宇治義則,吉田千晶,岡部紘明:トリグリセリド.日本臨牀 2009;67(suppl 8.):32-35.

大橋健:レムナント様リポ蛋白コレステロール(RLP-C).日本臨牀 2009;67(suppl 8.):29-31.

 

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