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2025.06.25
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1 はじめに
皆様、こんにちは。
このたび、ヒト臨床試験のプロトコルに関する国際的な報告ガイドラインとして広く活用されている「SPIRIT」が、最新版であるSPIRIT 2025として公開されました。
2024年に発表された「Methods used to develop the SPIRIT 2024 and CONSORT 2024 Statements」にて、更新の方向性が示されていたため、今回のリリースを心待ちにしていた方も多いのではないでしょうか。
オルトメディコのメルマガでも、同論文をもとに今後の更新ポイントを予測・解説してまいりましたが、ついに正式な変更内容が発表されました。
今回は、SPIRIT 2025で変更になった「Statistical methods」について紹介します。
SPIRIT 2025 no. |
SPIRIT 2013 no. |
Checklist item |
---|---|---|
27a | 20a | Statistical methods used to compare groups for primary and secondary outcomes, including harms |
27b | 20c | Definition of who will be included in each analysis (eg, all randomised participants), and in which group |
27c | 20c | How missing data will be handled in the analysis |
27d | 20b | Methods for any additional analyses (eg, subgroup and sensitivity analyses) |
従来の「Statistical methods Items 20a~c」は、SPIRIT 2025ではItems 27a~dとして再構成され、「誰を解析対象にするのか」、「欠測や感度分析をどう扱うのか」まで、より体系的かつ実践的な記載が求められるようになりました。
2 Item 27a: 群比較に用いた統計手法の詳細
従来のSPIRIT 2013では、Item 20aとして「主要アウトカムに対する統計手法を記載」とされていましたが、記述は自由度が高く、t検定やχ²検定などの記載だけで済むケースも多く見られました。
使用する統計モデルの構造 | 線形回帰、Cox 回帰、混合モデルなど |
推定方法 | 最尤法、一般化推定方程式など |
検定方法 | Wald 検定、尤度比検定など |
解析ソフトウェアやパッケージ | R、SAS、Stata など |
SPIRIT 2025では、主要アウトカムだけでなく、副次アウトカムや安全性解析に使用する手法も含めて記載するよう求められています。
3 Item 27b: 解析対象集団の定義
SPIRIT 2025では、「誰を解析対象とするか」を明確に定義することが新たに求められています。
解析対象集団 | ITT、FAS、PPS |
除外基準 | 脱落者の扱い、割付群からの逸脱の取り扱い |
これは、解析の透明性を高め、結果の信頼性を担保するための重要な改訂といえます。
4 Item 27c: 欠測データの取り扱い
SPIRIT 2013では「欠測データの処理を記載」とされていましたが、SPIRIT 2025ではさらに踏み込んで、欠測の想定メカニズムと処理方法を明示することが求められています。
欠測メカニズム | MCAR、MAR、MNAR |
補完方法 | 多重代入法、混合モデル、完全ケース解析など |
感度分析 | 実施有無とその理由 |
特に「MARと仮定し、MICE法で20回の多重代入を実施」など、再現可能な記述が推奨されています。
5 Item 27d: 追加解析 (副次・感度・サブグループ解析など)
解析の目的・タイミング・方法を具体的に記述することが明示され、探索的解析であっても記載が必須とされる方向です。
感度分析 | ITT vs PPS |
サブグループ解析 | 性別、年齢、重症度など |
多重検定の補正方法 | Bonferroni、FDR など |
計画 | 事前計画か事後計画か |
これにより、統計解析計画 (SAP) との整合性を保つとともに、研究の信頼性を高める意図があります。
6 まとめ
SPIRIT 2025では、統計手法に関する記載が大幅に具体化され、モデル構造や推定・検定方法、欠測データの取り扱い方針まで含めて、より体系的かつ再現性のある記述が求められるようになりました。今後は、単なる手法の羅列ではなく、解析戦略全体を見通した丁寧な設計と記載が一層重要になります。
オルトメディコでは、統計関連のコンサルティング業務として、プロトコルや学術論文中の解析計画の記載支援をはじめ、学会発表資料における生物統計の記述内容の確認・提案・修正など、さまざまなサポートを行っております。
現在、実施中の試験に対する解析のご支援も可能ですので、是非お問合せください。
7 参考文献
● | Hopewell S, Chan AW, Collins GS, Hróbjartsson A, Moher D, Schulz KF, Tunn R, Aggarwal R, Berkwits M, Berlin JA, Bhandari N, Butcher NJ, Campbell MK, Chidebe RCW, Elbourne D, Farmer A, Fergusson DA, Golub RM, Goodman SN, Hoffmann TC, Ioannidis JPA, Kahan BC, Knowles RL, Lamb SE, Lewis S, Loder E, Offringa M, Ravaud P, Richards DP, Rockhold FW, Schriger DL, Siegfried NL, Staniszewska S, Taylor RS, Thabane L, Torgerson D, Vohra S, White IR, Boutron I. CONSORT 2025 statement: updated guideline for reporting randomised trials. BMJ. 2025; 389: e081123. (PMID: 40228833) |
● | Asbjørn Hróbjartsson, Isabelle Boutron, Sally Hopewell, David Moher, Kenneth F Schulz, Gary S Collins, Ruth Tunn, Rakesh Aggarwal, Michael Berkwits, Jesse A Berlin, Nita Bhandari, Nancy J Butcher, Marion K Campbell, Runcie C W Chidebe, Diana R Elbourne, Andrew J Farmer, Dean A Fergusson, Robert M Golub, Steven N Goodman, Tammy C Hoffmann, John P A Ioannidis, Brennan C Kahan, Rachel L Knowles, Sarah E Lamb, Steff Lewis, Elizabeth Loder, Martin Offringa, Philippe Ravaud, Dawn P Richards, Frank W Rockhold, David L Schriger, Nandi L Siegfried, Sophie Staniszewska, Rod S Taylor, Lehana Thabane, David J Torgerson, Sunita Vohra, Ian R White, An-Wen Chan. SPIRIT 2025 explanation and elaboration: updated guideline for protocols of randomised trials. BMJ. 2025; 389: e081660. (PMID: 40294956) |
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