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2025.06.09

ベースラインは有意差検定をするべきか?

こんにちは。
株式会社オルトメディコ 統計解析課の髙橋です。

「これって意外と知らなかった!」という統計のポイントを、みなさんと一緒に整理していけたらと思います。
  • 資格
    危険物取扱者甲種
  • 学位
    学士 (工学)
  • 最終学歴
    2021年3月 日本大学 理工学部 物質応用化学科 卒業
  • 役職
    主任
  • プロジェクト
    ORTHOプロジェクト リーダー/社内データ利活用プロジェクト リーダー
  • 得意なこと
    解析プログラムの作成
  • 趣味
    温泉巡り
  • 好きな言葉
    努努努力を忘れるな
  • 連絡先
    planning-department@orthomedico.jp

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1 はじめに
4月に改訂された『CONSORT 2025』はもうご覧になりましたか?

私は現在読み進めている最中ですが、読めば読むほど、臨床試験の報告における注意点が明確になっていることに気づかされます。

今回はその中でも、多くの方が意外とやってしまいがちな「ベースラインの差の検定」について、注意点を簡潔にまとめてみました。

2 CONSORT 2025の内容
CONSORT 2025 explanation and elaboration」の「item 21a Explanation」に、以下の内容が記載されています。

【原文】
The testing of baseline imbalance in covariates should be avoided, as if randomisation is properly conducted, then by definition, any differences in baseline covariates between treatment arms are random.
【和訳】
ベースラインの共変量における不均衡を検定することは避けるべきである。なぜなら、ランダム化が適切に実施されていれば、定義上、介入群間のベースラインの差異はすべてランダムだからである。

つまり、「群のバランスをP値で確認する」という一見よくある行為は、誤解を招く可能性が高いということです。

詳しく説明すると、
ランダム化が正しく行われていれば、ベースラインでの差は偶然によるものと見なされるため、本来P値で差の有無を確認する必要はありません。

にもかかわらず、「群間で差があるか」をP値でチェックし、P値が有意だからといって、この差が試験結果に影響を与えたかもしれないと考え、後からベースラインの値を共変量として解析に加えるような対応をすると、解析方法を恣意的に変更したと見なされる恐れがあります。
こうしたやり方は、研究結果の信頼性を損なう可能性があるため注意が必要です。

本当に大事なのは、どの共変量を調整に使うかを、あらかじめ決めておくことであり、
臨床的・統計的に意味のある変数を、計画段階で決めておくのが正しい姿勢です。

3 まとめ
いかがでしたでしょうか。

今回伝えたいことは、
「P値に依存して解析方針を変えることが、かえって誤解やバイアスを生む」
ということです。

研究の透明性と信頼性を高めるために、計画的な共変量の扱いと、統計の「落とし穴」を避ける意識が不可欠です。

オルトメディコでは、統計関連のコンサルティング業務として、プロトコルや学術論文中の解析計画の記載支援をはじめ、学会発表資料における生物統計の記述内容の確認・提案・修正など、さまざまなサポートを行っております。

進行中の試験でも、解析のご支援が可能ですので、是非お問合せください。

4 参考文献

Hopewell S, Chan AW, Collins GS, Hróbjartsson A, Moher D, Schulz KF, Tunn R, Aggarwal R, Berkwits M, Berlin JA, Bhandari N, Butcher NJ, Campbell MK, Chidebe RCW, Elbourne D, Farmer A, Fergusson DA, Golub RM, Goodman SN, Hoffmann TC, Ioannidis JPA, Kahan BC, Knowles RL, Lamb SE, Lewis S, Loder E, Offringa M, Ravaud P, Richards DP, Rockhold FW, Schriger DL, Siegfried NL, Staniszewska S, Taylor RS, Thabane L, Torgerson D, Vohra S, White IR, Boutron I. CONSORT 2025 statement: updated guideline for reporting randomised trials. BMJ. 2025; 389: e081123. (PMID: 40228833)
Hopewell S, Chan AW, Collins GS, Hróbjartsson A, Moher D, Schulz KF, Tunn R, Aggarwal R, Berkwits M, Berlin JA, Bhandari N, Butcher NJ, Campbell MK, Chidebe RCW, Elbourne D, Farmer A, Fergusson DA, Golub RM, Goodman SN, Hoffmann TC, Ioannidis JPA, Kahan BC, Knowles RL, Lamb SE, Lewis S, Loder E, Offringa M, Ravaud P, Richards DP, Rockhold FW, Schriger DL, Siegfried NL, Staniszewska S, Taylor RS, Thabane L, Torgerson D, Vohra S, White IR, Boutron I. CONSORT 2025 explanation and elaboration: updated guideline for reporting randomised trials. BMJ. 2025; 389: e081124. (PMID: 40228832)

株式会社オルトメディコ
研究開発部 統計解析課
髙橋 徳行

〒112-0002 
東京都文京区小石川1丁目4番1号
住友不動産後楽園ビル2階
TEL: 03-3818-0610
E-Mail: planning-department@orthomedico.jp

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